世界で最も奇妙な11の特許出願要件

タイラー・ヤング(Tyler Young)

特許出願のプロセスが国家間でもう少し統一されていたらいいなと思うことはありませんか?もしそうなら、それは、恐らく、あなただけではないでしょう。出願人にとって、出願要件は、複雑であり、管轄区間で一貫性がありません。

世界で最も奇妙な11の翻訳関係の出願要件を集めてみました。これらの出願要件は、困難とは言いませんが、普通ではないことは確かです。これらの取り扱いのための有用な対処法もいくつか記載致します。

1) アイスランド
多くの国では、特許出願がその国の公式言語に短期間で翻訳される限り、どの言語でも最初の特許出願を認めています。(ほとんどの管轄区では、通常、公式言語は、2言語以下です。)

  • 奇妙な点:アイスランドの唯一の公式言語は、(92%の国民により話されている)アイスランド語ですが、当国の特許庁は、どの国よりも多い異なる5言語での出願を受理しています。全体のテキストは、アイスランド語、英語、デンマーク語、スウェーデン語、又はノルウェー語のいずれか1カ国語で構いません。ただし、気を付けなければならないのは、請求項及び要約書は、アイスランド語で提出する必要があります。
  • 対処法:お分かりのように、5言語のうちどの言語でも出願時には受理してもらえます。しかしながら、特許査定においては、英語又はアイスランド語の翻訳文を提出しなければなりません。他の翻訳文の出願を省くために、最初から、英語又はアイスランド語を選択すれば処理を簡潔にすることができます。

2) スウェーデン
特許翻訳文を提出することは、通常、法的に義務づけられています。つまり、不適切な翻訳文では、特許の範囲が最終的に変わってしまい、優先権出願によって、実施権が縮小してしまう場合があります。この残念な状況において、翻訳文が不適切であったという理由だけで、競合他社が貴社の出願中の特許に恒久的に侵害できる使用権を取得してしまう場合があります。

  • 奇妙な点:スウェーデンは、翻訳を法的に義務づけることを止めました。翻訳文が不適切であると判明した場合、裁判所は、優先権出願の文言に基づいて判断を下すこととなります。この独自の規則により、翻訳文は、単なる形式上のものとなっています。
  • 対処法:優先権出願が英語で提出されなかった場合でも、とにかく英語に翻訳し、英語で出願する。例えば、スウェーデン語から中国語への翻訳者を見つけるよりも英語から中国語への翻訳者を見つける方がはるかに容易なので、他国で出願する際に有利です。

3) スイス
ほぼ全ての特許庁は、管轄権を主張する地理的エリアに対して、国内保護であれ、(EPO、GCC、又はARIPOのような)広域保護であれ、特許査定を行います。換言すれば、国内特許庁は、対応する国家に対してだけ特許査定を行い、広域特許庁は、対応する地域に対してだけ特許査定を行います。

  • 奇妙な点:スイスの国内特許庁で取得された特許は、リヒテンシュタインにおける特許取得をも意味します。正に、1カ国分の料金で2カ国分得られるのです!
  • 対処法:(年金によってでさえも、スイス及びリヒテンシュタインは密接に繋がっているので、)スイス又はリヒテンシュタインのいずれか一方で特許を別々に出願することはできないため、願ってもない文字通り「1つ買うともう1つおまけ」的な取引を手にすることができます。

4) シエラ・レオネ
特許法は、現地政府によって制定されていますので、特許出願は、法的に認められ、保護されています。

  • 奇妙な点:2012年以前、シエラ・レオネでの特許は、英国で査定又は有効とされた特許の再登録によって取得することができました。残念なことに、2012年制定の特許及び意匠法によりこの慣行は終了しました。当国の特許法は、依然として有効であり、特許出願は、今でも受理されていますが、提出済みの出願を処理する法規が現在存在せず、登記官も任命されていません。結果的に、特許出願は、法規が有効になると、取り扱われるものとして、シエラ・レオネに権限を委ねられています。
  • 対処法:アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)を介して、抜け道を使って、シエラ・レオネで特許を取得する。シエラ・レオネは、同機関のメンバーであるので、ARIPOにより査定された特許であれば、シエラ・レオネにおいても効力を有します。2012年制定の特許及び意匠法第49条には、登記官は、ARIPOの指示の拒絶を発することができると記されています。しかしながら、シエラ・レオネには登記官がいないため、特許は、そのまま受理されています。

5) アラブ首長国連邦
大半の特許庁は、1言語での特許出願を受理するか、又は出願用の複数の受理可能な言語の中から言語を選択するように出願人に要求しています。しかしながら、翻訳文提出期限には、通常、最終1言語のみが必要とされています。

  • 奇妙な点:アラブ首長国連邦 (UAE)は、出願時、英語アラビア語の両方が要求されるという点で独特です。大半の海外からの出願人は、出願書類の英語の翻訳文を既に所有しています。しかし、優先権出願が別の言語の場合、UAEの出願期日には、まれに2つの翻訳文を用意することとなります。
  • 対処法:UAEに出願時、アラビア語と英語の両方の出願書類を用意する必要がある代わりに、湾岸協力会議(GCC)を介して広域に出願することを検討して下さい。GCCもまた、アラビア語と英語の両方を要求していますが、サウジアラビア、オマーン、クウェート、バーレーン、及びカタールのような同様の市場を有する他の近隣国に対してもUAEを越えて貴殿の権利の保護を拡大することができます。ただし、GCC特許は、直接出願ですので、
    30ヶ月又は31ヶ月ではなく、12ヶ月間で期限切れとなりますのでご注意をお願いします。

6) ベルギー
多くの国は、2言語以上の公式言語があります。典型的には、当地の特許庁は、これらの言語での特許出願を受理しています。例えば、フランス語が話せるが、その国のドイツ語を話す地域に住んでいる場合でも、フランス語の翻訳文も受理されます。

  • 奇妙な点:貴社がベルギーにある場合、特定の地域の主たる言語で出願しなければなりません。例えば、北ベルギー外に拠点を置く企業は、オランダ語で出願する必要があり、南ベルギーの企業は、フランス語の翻訳文が必要になるでしょう。ドイツ語の翻訳文のみが受理可能である、ドイツとの国境沿いのドイツ語を話す小さい地域も存在します。
  • 対処法:朗報:ベルギーに拠点を置かない限り、この法律の効力はありません。しかしながら、貴社のベルギーのオペレーションが国内特許を作成及び出願する場合、その特許がその地域の「公式言語」で記載されていることを確認する必要があります。または、おかしいかもしれませんが、優先権出願のために翻訳文が必要となります。

7) ブルンジ
管轄区の言語要件は、通常、標準的です。特許庁は、出願時に受理可能な言語のリストと共に翻訳文の提出期日以降に受理される言語を公表しています。ある言語が特許庁により受理可能としてリストに掲載されている場合、概ねそれで十分と言えます。

  • 奇妙な点:ブルンジの特許庁は、受理可能言語として、キルンディ語、フランス語、及び英語をリストに掲載していますが、特許庁の知的財産部は、審査官達がフランス語の方が自信があると明確に表明しています。
  • 対処法:英語を使用したくなる気持ちがあるかもしれませんが、フランス語の翻訳文を提出して下さい。審査官は、自身の決定に対して客観的であることが期待されることは真実ですが、貴殿が請求した保護権の運命がどちらに転ぶか分からないとしたら、審査官達ができるだけ読みやすいようにしてあげたらいかがでしょうか?

8) ブラジル
特許庁は、通常、特許出願書類の完全な翻訳文を出願期日又は(「延長期限」と称される場合が多い)翻訳文提出期日のいずれか一方までに提出するように求めています。延長期限を使用する場合、全翻訳された出願書類の期日は後日になります。延長期限を使用しない場合、又は利用不可能な場合、(必要な場合、)完全な翻訳文の期日は、通常の出願期日になります。

  • 奇妙な点:ブラジルは、出願時に部分的な翻訳、つまり、要約書、請求項、及び発明の名称だけの提出を要求する数少ない国の1つです。わずかな初期投資をして、部分的な翻訳文を入手することによって、出願人は、出願日を固定させ、完全な翻訳文の提出の必要性を最大60日間、単純に遅らせることができるのです。
  • 対処法:わずかな延長料金を支払う意志があるなら、-もっと重要なことであるがー、追加の60日を利用して、時間を追加すれば、翻訳文の品質を向上することができると考えられます。1回目(つまり、この場合、2回目ですが)からきちんとした翻訳文を提出することをおすすめします。

9) 南アフリカ
特許翻訳文を提出するための期限延長は、世界中で通例的に付与されています。主に、その目的は、発明者に追加の時間を与えて、適宜、適切な翻訳文を入手させることです。出願書類の量によりますが、原文の特許と一致する完全な翻訳文は、完成するまでに数週間要するでしょう。

  • 奇妙な点:南アフリカは、翻訳文の品質を改善するための時間を必要とする出願人に対して、3ヶ月という十分な期限延長を認めています。しかしながら、その法律は、若干、曖昧に書かれています。6ヶ月の期限延長が許可されると解釈する人もいます。明確に記載されていないのです。
  • 対処法:3ヶ月という期間は、それだけで、貴殿の出願書類を南アフリカの公式言語(英語、アフリカーンス語、ズールー語、又はコーサ語)のうちの1言語に完全かつ正確な翻訳文に仕上げるためには十分な時間です。したがって、審査官は、貴殿と同じように法律を解釈しないので、3ヶ月では十分ではないという酌量すべき情状がない限り、貴殿の出願が拒絶される危険性を軽視してはいけません。

10) 台湾
伝統的に、管轄区は、1回だけの、翻訳文提出期限の延長(2~3ヶ月)を付与し、ほとんどの場合、利用しても費用がかかることはありません。

  • 奇妙な点:台湾は、翻訳要件において寛容である立場を選択しており、恐らく、世界のどの管轄区よりも寛容です。中国語(繁体字)の翻訳文を作成するために、4ヶ月の期限延長が利用可能です。まだ足りない?更に2ヶ月の延長を追加することができます。つまり、最大6ヶ月かけて翻訳文を仕上げることができます。これらの期限延長の両方共が無料です!
  • 対処法:6ヶ月の翻訳文提出期限の無料の延長は、かなり十分なように思えますが、台湾の(優先日からの)総翻訳時間については、他の管轄区と比較した場合、話は違ってきます。総翻訳時間の観点からみると、事実、(期限延長を含む)台湾の翻訳時間は、特許協力条約を提示する他の全ての国より短いのが現実です。台湾の出願期限は、世界貿易期間(WTO)経由で12ヶ月です。通常よく使用されるPCTソリューションは、出願及び翻訳のために少なくとも30ヶ月です。大局的に見ると、台湾の最終翻訳時間は、利用可能な期限延長を全て含めても、優先日から18ヶ月です―期限延長が利用できないドイツの合計30ヶ月と比べれば、雲泥の差があります。

11) フランス
欧州特許庁(EPO)の加盟国はまた、伝統的に、EPOの査定後の有効化に対する代替策として、各国それぞれの国内特許庁に対して直接PCT出願することを認めています。4カ国以下のヨーロッパの国々で出願する予定の場合、国内移行PCT出願をする方が、通常、意味があると思われます。

  • 奇妙な点:フランスは、国内のPCT出願を止めましたが、国際出願は継続しています。直接出願は今でも可能ですが、余裕のあるPCTのタイムテーブルを利用するためには、フランスは、まず、EPOを介してPCT出願するように要求しています。終了すると、フランスは、審査後有効化を自動的に付与しています。
  • 対処法:フランスにおいて保護権を執行するために、EPO査定の後まで待てるなら、EPOに出願して、査定を待って、その後、(英語で欧州特許出願を提出済みと仮定すると、)請求項だけをフランス語及びドイツ語に翻訳して下さい。対処法の一環として、フランス国外で事業を展開する予定の場合、他の国での有効化は、ヨーロッパ中で貴殿の発明を保護するための費用対効果の高い方法です。

私共が発見できた最も特異な出願要件の一部をシェアいたしましたが、勿論、私共のリストは絶対ではありません。私共が見落として皆様が思い浮かんだ珍しい出願要件にはどんなものがあるでしょうか?